《MUMEI》

.

「…あんたは、なにがしたいのよ?」


呆れてぼやくと、廉は答えた。


「迎えに来た」



…。

……。

………は??



「『迎え』??」


聞き間違いだろうか。

なんで?と聞き返したわたしに、廉はぶっきらぼうに言った。


「いいから乗れ。時間ねーんだよ」


「だから、なんでよ?」


取り合わず、同じ言葉を繰り返すと、彼は舌打ちして身を乗り出すと、いきなりわたしの腕を掴み引き寄せた。なし崩し的に、わたしの身体はタクシーのシートの上に倒れた。


「なにすんのッ!?」


叫ぼうとしたわたしの口を、廉の大きな手がふさぐ。抵抗するわたしをあっさり押さえ付けると、彼は運転手に、出して、と淡々と告げた。

彼の言葉のすぐあとにドアが閉まる。そのままタクシーは発進してしまった。


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