《MUMEI》

A常務「もしキミが断れば、この百年に一度の不況下に2万人の従業員が路頭に迷うことになる…。


そのなかには、先行きに絶望して自ら命を断つ者が何人もでるだろう…。


残酷な言い方かもしれないが、キミ一人が犠牲になるだけで、そんな従業員を救うことができるんだ。」



アンパンマンは、カレーパンマンと向き合い、その肩をポンと叩いた。



グッと込められた握力に、命令の重大さを伝えるように…。



A常務「会社が潰れたとしても、この先キミは妻子と慎ましやかな生活を送ることができるだろう…。


だがキミは妻を抱く度に……娘の寝顔にキスする度に、こう顧みるだろう…。


この幸福は、誰かの屍の上に成り立っている――…。


自分だけが救えた命を僕は救わなかった――…。



……とね。」

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