《MUMEI》
わたしの犬
わたしは幼い頃、犬を飼っていた。

部屋で飼っていた中型犬で、とても頭が良く、幼かったわたしの面倒を見てくれるほどだった。

わたしは犬と散歩に行くのが楽しかった。

けれど、ある日。

普通に歩道を歩いていただけなのに、一台の車がわたしの方に向かって走ってきた。

犬が―リードを引っ張って、わたしを引っ張ってくれた。

だからわたしは転んでケガをしたけれど、無事だった。

だけど…犬は死んだ。

車に轢かれて。

車は逃げた。

わたしの犬を轢いたまま。

―殺してやる。

まだ小学生だったわたしは、心の底からそう思い、遠ざかっていく車を睨み付けた。

そして血まみれになった犬を連れて、家へ帰った…ハズだった。

その後の記憶があやふやだった。

しかし家に帰ってきたのは、血と泥に塗れたわたし一人だけだったと、両親は言った。

無残な姿で帰ってきたわたしを見て、両親はさぞかし驚いただろう。

そして犬のことを言うと、両親は怒って、警察に言った。

わたしは逃げる車のナンバープレートを覚えていたから、すぐに犯人は見つかった。

だけど…ペットを殺しても、犯人は軽い罪に問われるだけ。

すぐに自由の身になるのだと、両親は怒っていた。

こんなことって…!

犬はわたしの家族だったのに!

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