《MUMEI》

…けれど、どんなに願っても、叶わないこともあった。

わたしの犬を殺したヤツのことだ。

今でものうのうと、近所に住んでいやがる。

腹が立ってしょーがない。

わたしは思い出すたびに、むかむかしていた。

それを抑える為に、いつも近所の神社に来ていた。

今時珍しく、土の上に建つ神社。

犬とよく散歩に来ていた。

犬はここの狛犬が好きで、よくじゃれ付いてたっけ。

思い出深い場所に来ると、ほっとする。

……しかし、ちょっとイヤな気分にもなる。

この土道を歩くと、何かに吸い込まれそうな気分になる。

この場所を離れると、体がずっしりと重くなる。


もしかしたら、邪心を持ちながら、神域に来るわたしを、怒っているのかもしれない。

―…が。

わたしは目を閉じた。

「アラ、お久し振りね」

声をかけられ、目を開けると、銀色の長い髪に、青い瞳の美少女がいた。

明らかに、外国人だ。

「えっと…」

「どうだった? 教えたオマジナイの効果は」

「オマジナイ?」

…人違い、ではないのだろうか?

でも…彼女を見ていると、どこかで会ったこともあるような…。

「ずっと一緒にいられるようにと、アナタは願ったじゃない」

「…!?」

頭の中に、イメージが浮かんだ。

血塗れの犬を抱えて、この神社に立っているわたしの姿が。

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