《MUMEI》 「うっ…だっ大丈夫? 生きてるっ?」 何とか瓦礫を避けながら、彼のいた方向に進む。 運転席の方は…残念ながら瓦礫が邪魔で、行けなかった。 だから近くにいたはずの彼の元へ行った。 彼はいた。 …だけど、瓦礫で体のあちこちが傷だらけになっていた。 「ねっねぇ! 大丈夫?」 彼もまたイスの下にいた。 だから身を縮ませて、彼の頬を軽く叩く。 キレイな顔が、血とほこりに汚れていた。 ハンカチを取り出し、ぬぐった。 「うっ…」 ゆっくりと目を開き、彼はアタシを見た。 「あれ…? 一体何が…」 「…どうやら事故に合ったらしいの。運転手の人はどうなったのか分からない。でもお互い無事でよかったわね」 顔を拭いてあげながら言うと、いつも柔和な笑みを浮かべている彼の顔が、無表情になった。 「オレは別に…。どうなっても良かったんだけどな」 「えっ?」 彼の呟きに、手が止まる。 「…別に生きてても死んでても、オレにとっては同じだし。あ〜でも痛いのはキライなんだよな」 …アタシの、目の前にいるのは、誰? いっつもニコニコと笑っている彼じゃなく、とても冷めた目と表情をする彼は…。 「なっ何でそういうことを言うのよ! 人が羨むような人生送ってるんじゃないの?」 「あ〜それね。よく言われるけどさ。自分が望んでいないものが周りに溢れてたって、意味無いと思わない?」 「それはっ…!」 …そうだけど。 前へ |次へ |
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