《MUMEI》 . ガラス扉に手をかけたとき、ようやくわたしを振り返ると、 彼は、ぶっきらぼうに言った。 「ぼーっとしてんなよ、早く来い」 その言い方に、多少ムッとして、わたしは廉を睨んだ。 「ムリヤリ連れて来ておいて、なに、その言い方?」 ムカつくヤツだね、と毒づくと、廉は感じ悪く舌打ちし、面倒くせーな…と吐き捨てる。 それからわたしのところまで戻ってくると、躊躇いなくわたしの手を取った。 廉は、有無を言わせず、スタジオの方へグイグイ引っ張っていく。 「マジで時間ギリギリなんだよ。それに今さら、ギャーギャー騒ぐな」 「騒ぐでしょ!フツー騒ぐよ!!離せ、バカッ!!」 わたしは精一杯抵抗したが、廉の力には及ばず、 そのまま、スタジオの中へと、連れていかれたのだった。 ****** 前へ |次へ |
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