《MUMEI》

.

ガラス扉に手をかけたとき、ようやくわたしを振り返ると、

彼は、ぶっきらぼうに言った。


「ぼーっとしてんなよ、早く来い」


その言い方に、多少ムッとして、わたしは廉を睨んだ。


「ムリヤリ連れて来ておいて、なに、その言い方?」


ムカつくヤツだね、と毒づくと、廉は感じ悪く舌打ちし、面倒くせーな…と吐き捨てる。

それからわたしのところまで戻ってくると、躊躇いなくわたしの手を取った。
廉は、有無を言わせず、スタジオの方へグイグイ引っ張っていく。


「マジで時間ギリギリなんだよ。それに今さら、ギャーギャー騒ぐな」


「騒ぐでしょ!フツー騒ぐよ!!離せ、バカッ!!」


わたしは精一杯抵抗したが、廉の力には及ばず、

そのまま、スタジオの中へと、連れていかれたのだった。





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