《MUMEI》

カレーパンマンは屋上の一角に靴を揃えて脱ぐと、胸の高さほどの柵を乗り越える…。



そして新宿の街を見下ろす高層ビルの、外壁の最上部に佇んだ。



見下せば目も眩む高さにカレーパンマンの足がすくむ――…。



かつてヒーローだった男は、もう空を飛ぶこともできない…。



カレーパンマンが、そこから一歩だけ宙空に足を踏み出せば、アンパンマンの策略は容易に実現するだろう。



アンパンマンとジャムおじさんは、社の命運を背負って其所から飛び降りようとする男の後ろ姿を見つめていた。



カレーパンマンは意を決するように、肩を大きく弾ませて深呼吸を繰り返していたが…



やがて、その肩の挙動は静かに止んだ――…。

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