《MUMEI》

やがてコーヒー屋を見つけ、二人は中に入った。

中年のマスターは、愛想良く2人を迎えてくれた。

「ソウマさんのおつかいだね。はい、いつもの」

すでにコーヒーは粉にして、袋詰めにされていた。

「ありがとうございます」

マミヤは勘定を済ませ、袋を受け取った。

「ところでマスター」

ハズミは人懐こい笑みで、マスターに聞いた。

「ここら辺で最近、事故で女の子が亡くなってない?」

「ああ…。あの事故かい?」

マスターはすぐに気付いたようだ。

「つい一週間前、道を歩いていた女の子が、暴走してきた車に突っ込まれて…。あっという間の出来事だったらしいね」

「…ふぅん。なるほどね」

それを聞いて、ハズミは納得がいった顔をした。

「次は家の訪問だな。ここでも受け取るものがあるらしい」

「ソウマさんの店の新製品のお試し品だって。マカが顔を思いっきりしかめてたよ」

ハズミがマカのしかめっ面の顔真似をしたので、マミヤは思わず噴出した。

「あの人、ソウマさんの店の商品、嫌っているからな」

「まあ確かにお取り扱い危険物ばっかだもんね」

ハズミが肩を竦めたところで、目的の家にたどり着いた。

「おや、いらっしゃい」

和服姿の穏やかな青年が迎えてくれた。

「あなた達がソウマさんの所で働くことになった方達ですか」

「マミヤと申します」

「ハズミです」

2人は頭を下げた。

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