《MUMEI》 …でも自分の部屋に入ると、気分はズーンと重くなる。 何せ机の上には、チョコ菓子の作り方の本がドッサリ置いてあるから…。 「はあ〜」 図書館から借りたり、友達から借りたりしたから、エライ量になっているな。 良いなと思ったページには付箋も付けてるし。 イスに座って、パラパラめくる。 美味しそうなチョコ菓子が、いっぱい載っている。 「…おせんべいとか、おかきの作り方が載ってる本を探そうかな」 帰り道、それとなく彼に好みを聞いたら、好きなお菓子はやっぱりおせんべいとかおかきって答えた。 今、家でも簡単に作れるレシピも出ているだろうし、ムリにチョコを作って、彼にイヤがられることもない。 「でもなぁ、やっぱり普通はチョコよね」 …でも彼が嫌いだというのに、渡せば嫌われることは絶対だ。 「まっ、とりあえずはおせんべいかおかきを作ろっか! そっちの方が簡単に作れそうだし!」 声に出して、明るく振る舞ってみても、…何だか虚しい。 どーせ不器用だから、チョコなんて難しいものを作ったって失敗の確率高いし…。 それに何より、彼に嫌われたくない。 付き合い始めて二ヶ月経つけど、一度も彼から『好き』という言葉を聞いたことがない(泣)。 わたしが、 「あっあのね! ずっとあなたのことが好きだったの! だから、付き合ってほしいの!」 と真っ赤な顔で言うと、 「ああ、いいぜ」 …あっさり彼はそう言った。 その場ではしゃぐほど嬉しかったけど、彼の態度は変わらずクール…。 だから未だにわたしが彼の『特別』なのか、分からない。 分からないからこそ、嫌われるようなことはしたくない。 前へ |次へ |
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