《MUMEI》 「って、思ってる場合じゃない!」 二つとも同じ箱だったから、間違えちゃった! 「ん? どうした?」 彼の方を見ると、すでにチョコを食べはじめていた。 「あっアレ? 甘い物、キライなんじゃなかったっけ?」 「あ〜、そう言ったっけ?」 そう言いながらも、彼はチョコを食べ終え、コーヒーを飲んだ。 「確かに甘いモンは苦手だけど、お前の作ったものなら別だろ?」 「えっ? ええっ!?」 カーッと頭に血が上る。 「だから、彼女が作ったもんは、別なんだよ」 「えっ、なっ、だって…」 一度も好きって言ってくれなかったのに…。 …こんな時に言うなんて、卑怯だ。ズルイ…。 「でもこのチョコ、結構甘いな」 「えっ!?」 いっ一応彼に食べもらうところを妄想(!?)しながら作ったから、甘さ控え目のビターチョコで作ったのに! こっコレでも甘いって言うんだから、よっぽどの辛党なんだろうな。 「あっ、ゴメン…。そっそうだ! こっち、おかきも作ってきたから、良かったら口直しに…」 おかきの箱を差し出そうとして、顔を上げた時…。 「あっ…」 彼の顔が、間近にあった。 そしてそっと唇が重なった。 「…確かに甘いね」 唇から、甘さが口の中に広がった。 「だろ?」 間近にある彼の顔は、真っ赤だった。 「それにしても、おかきまで作ってきたのか。もしかしてお菓子作りが趣味?」 前へ |次へ |
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