《MUMEI》

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松前さんはまだカメラを覗いたまま、のんびりした口調で続けた。


「OK!じゃあ、好きなように動いて」


廉は言われるままに、少しずつ表情やポーズを変えていく。その度にカメラのフラッシュがたかれ、シャッターの音が響いた。

松前さんは顔をあげて満足そうに、いいねぇ、と廉を褒める。

それから傍にあるテーブルの上に置かれていたカメラを持ちあげ、廉がいるセットへ近寄った。


「そこに腰掛けてみようか?」


松前さんはセットの中のキューブ状の椅子を指さし、廉に言った。廉は、ハイと素直に返事をして、ゆっくり腰を掛ける。

すぐさま衣装係が近寄り、廉の服を調整して、瞬く間に下がって行った。

松前さんはさっきよりも近い場所から、カメラを手で支えて、廉にレンズを向けると、シャッターを数回切る。

廉は笑ったり、真面目な顔をしたり、視線をカメラから外したり、様々な表情を見せていた。


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