《MUMEI》
突然のキス
キス―された。

いきなり抱き締められ、抵抗する間も無くキスされた。

拒絶なんてしなかった。

された後だって―しなかったのに。

「…んでっ」

「えっ…」

「何で抵抗しないんだよっ! キミは!」

…と怒られてしまった。

「はあ…。すみません」

「何で謝るんだよ! オレは謝ってほしいわけじゃない…!」

そう言って、再び強く抱き締められる。


息も出来ないほどの強い抱擁は、イヤじゃない。

だから抵抗しない。

彼とは、近隣の高校の生徒会の交流会で知り合った。

彼は有名私立の生徒会長。明るく行動的で社交的。

自分とは正反対のタイプだと、一目で気付いた。

自分は生徒会書記。無口で、人付き合いがヘタなタイプだった。

人はキライじゃない。

けれど人の心は複雑過ぎて、分かりにくかった。

だから距離を置いていた。

なのに彼はどんどん自分の領域に入ってきた。

不思議とそれをイヤとは思わなかったので、そのまま受け入れていた。

だけど今日、交流会が終わった後の生徒会室で、いきなり彼に抱き締められ、キスされた。

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