《MUMEI》

「もしかして…他のヤツにもこういうこと、させてる?」

「する人なんて、あなたぐらいなものですよ」

そう言って、彼の背に手を回した。

熱い体―。

冷たい自分とは、何もかも正反対だ。

「じゃあ、何で抵抗しないの? イヤじゃないの?」

「イヤでは…無いですね」

イヤならとっくに張り倒している。

これでも武道有段者だ。

「イヤじゃないなら、何?」

少し体を離して、顔を覗き込んでくる。

あまり見たことの無い必死の表情。

何故そんな顔をするのか、自分には分からない。

「あなたこそ、何故自分にこんなことを?」

「そんなのっ、決まっているじゃないか!」

…決まっているのか?

「キミのことが好きだからだよ!」

「好き…」

好き…というのは、個人的意見だろうか?

「好きなんだ、キミのことが。誰にも渡したくない、誰にも譲りたくないぐらいっ…! 出来れば誰にも見せたくないよ」

切なそうに囁く彼は、真剣だ。

そのせいか、胸の辺りがじんわり熱くなる。

彼の熱がうつったのか?

「キミは…オレのこと、好き? 好きじゃないなら、今すぐ逃げて。逃げないならもう二度と離さない…っ!」

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