《MUMEI》

カルマはそこでお礼を言って、話を終わらせた。

「鏡…ですか」

「でもさ、カルマ。鏡の幽霊っているのか?」

「…はい?」

おかしな質問をしてきた男子生徒の顔を見て、カルマは笑みを固めた。

「だってさ、鏡があった場所なんだろう? きっと壊されちゃってさ。そのことを恨んで、【死神】になったんじゃ…!?」

悲鳴が響き渡ったので、カルマは耳を塞いでやり過ごした。

「…なら、ちょっと見に行きましょうか?」

「えっ!?」

「まだ次の授業が始まるまで時間がありますし、見てきましょうよ」

そう言ってズンズン進んでいくものだから、クラスメート達は慌てて後を追った。

ガタガタ、ブルブル震えるクラスメート達を横目に、カルマは例の踊り場へ来た。

しかし壁には何も映っていない。

「ふむ…」

カルマは恐れず、壁をペタペタ触った。

「わ〜! カルマ!」

「呪われるわよ! 【死神】に!」

「はいはい」

適当に返事をしながら、素手で壁を触っていく。

ザラザラした手触り、ただの壁だ。

叩くと、コンコンッと音がするだけ。

やがてカルマは気が済んだのか、壁から背を向けた。

「今は何も無いようですし、もう戻りましょうか。時間が無くなっています」

「あっああ…」

「そうねっ…」

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