《MUMEI》

再びカルマを先頭にして、クラスメート達は動き出す。

ところが最後尾の女子生徒が、ふと壁に視線を向けた時…。

「きっきゃあああ!」

悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちた。

「どっどうした?」

「大丈夫?」

慌てて戻って来たクラスメート達に抱きつきながら、女子生徒は真っ青な顔で、震える指先で壁をさした。

「【死神】がっ、【死神】の横顔が見えたの!」

その言葉を聞いて、カルマを含めるクラスメート達は壁を見た。

だが…陽の光が当たっているだけで、壁には何も映っていなかった。

「そっそんなっ…!」

女子生徒は泣き出してしまった。

騒ぎ出す生徒達の中、カルマだけは静かに壁を見つめていた。

―その夜。

静かな校舎に、1人分の足音。

窓ガラスから差し込む月の光を浴びて、カルマの姿が浮かび上がる。

カルマは階段を上り、例の踊り場に出た。

カルマが壁に近付くと、月の光を受けた壁に…【死神】が映った。

白骨の体を黒い布で覆っている【死神】は、カルマが近付くにつれ、その色と形を濃くしていく。

壁から50センチの所で、カルマは歩みを止めた。

すると【死神】も止まる。

―まるでカルマの動きと同じように。

それを見て、カルマは深く息を吐き、軽く頭を振った。

少し長い、薄茶色の髪が、真っ白に染まる。

そして黒がかかった茶色の眼が、金を含めた赤眼になった。

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