《MUMEI》 カルマと名付けたのは、父親だった。 カルマ―業を背負うもの。 生者でありながら、死者でもあるもの。 またはどちらでもない存在として。 そのことが本当に業なのか、カルマは分からない。 ただ、生きていて欲しいと強く願われて、生まれてきたことは自覚していた。 「だから…ボクは生きるんですよ。お母さん」 漆黒の空に浮かぶ、満月を見上げながら、カルマは微笑んだ。 「父さんとも仲良くしてますから、安心してくださいね? 滅多なことじゃ、正体はバレませんし…」 …まあ同属を除けば、だが。 「勉強も運動も頑張っています。友達も多いんですよ? 好きな人はいませんが、尊敬している人はいます。…なかなか良い人生を送っていると思いませんか?」 そしてカルマは目的地へ着いた。 自分の存在と同じように、この世にあって、この世のものじゃない、小物屋に。 深夜遅くなのに、店からは光があふれ出ていた。 「今晩は。ソウマさん、いらっしゃいますか?」 「いらっしゃーい」 「いらっしゃいませ。店主を今、呼びに行きますので、少々お待ちください」 茶髪で明るそうな青年と、真面目そうな青年に出迎えられた。 「あれ? バイトの方ですか?」 「おうよ! オレはハズミ。こっちはマミヤ。新入りなんだ」 「何でお前はお客様にエラそうなんだ?」 マミヤは冷ややかにツッこむと、店の奥へ行った。 まもなく、店主ことソウマが姿を現した。 「おや、カルマ。お久し振りですねぇ。今日はどうしました?」 「実はちょっと困った物がありまして…」 前へ |次へ |
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