《MUMEI》

困り顔で、カルマはソウマに鏡を向けた。

ソウマは鏡に映った自分の姿を見て、険しい表情になった。

「えっ? なに? 鏡?」

「ハズミとマミヤは見ない方が良いですよ。この鏡は真実の姿を映すようですから」

ソウマの真面目な声に、2人は眼を見開いて、鏡から離れた。

「…そういうリアクションをとるということは、お2人は…」

「まあそういうことです。しかしカルマくん、コレをどこで?」

「元はボクの高校の創立者が、友人から送られたものだそうです。校舎を建て直す時に、『人以外のものを映す鏡』として、壁に埋め込まれていました。ところが…」

そこまで話して、カルマは深く息を吐いた。

「鏡の力は壁を通してしまい、ボクの本当の姿が映し出されちゃったんですよ。しかも同じ学校の生徒に、何度も目撃されてしまって…」

「おやおや。それは困ったことですね」

苦笑したソウマは、カルマから鏡を受け取った。

「事情は分かりました。この鏡は私の方で引き取りましょう」

「すみません。ところでこのこと何ですけど…」

「ああ、大丈夫ですよ」

ソウマはニッコリ微笑んだ。

「人のウワサってものは、流行るのは早いですけど、消えるのも早いものですから。元凶が消え去った後なら、特に」

「それならいいんですけど…。ボク、壁を壊してきてしまったままなんですよね」

「ああ、それなら…」

ソウマは笑顔をハズミとマミヤに向けた。

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