《MUMEI》

そんなふうに盛り上がっている松前さんに、廉はしびれを切らしたように言った。


「こんなヤツほっといて、そろそろ後半の撮り始めましょうよ」


ぶっきらぼうに言った廉に、伊達さんが、コラッ!と怒る。


「そんな口のきき方、松前さんに失礼でしょう!?」


怒鳴られた廉は、全く悪びれる様子もなく、プイッとそっぽを向く。伊達さんはそんな廉を見て、まったくもー!と呆れたようにため息をついた。

二人のやり取りを見ていた松前さんは、楽しそうに笑い、そうだね、と頷いた。


「早く、始めようか!時間もないんだしね!」


そう言って、廉にスタンバイするよう指示を出すと、スタッフのいる方へと戻って行った。



………変なオジサン。



松前さんの後ろ姿を見ながら、ぼんやりと思った。

廉は指示通りに、セットの方へ行こうとしたが、一度、こちらを振り返ると、

ぼんやりとしているわたしの顔を見て、


「良い気になるなよ、庶民」


高飛車に言った。


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