《MUMEI》

「呼んだ理由はですね。…フム」

向かいにいる魔王は、少し考え込んだ。

「キミには付き合っている人はいますか?」

「…はい? いませんけど」

「それなら良かった」

…何がだ?

「じゃあハッキリ言いますね」

「はい」

「わたしと付き合ってほしいんですよ」

「……………はい?」

あっ、どこに、だろうか?

「言っておきますけど、場所じゃないですからね」

…チッ、現実逃避したかったのに。

「頭でも打ったんですか?」

「いえ、至って真面目ですが?」

疑問を疑問で返しやがった。

しかし…やっぱりどこかを打ったのだろうか?

一回り年下で、しかも教え子、そして男の俺に何を言い出すんだろう。

あくまで冷静でいる俺も俺か。

「…ちなみに断ると、俺はどうなります?」

「別にどうもなりませんよ。ああ、でもキミに好意を抱く人はどうなるかは分かりませんよ?」

一気に体温が下がった。

…顔が笑っているのに、目が笑っていない。マジだ。

「……それって、脅迫では?」

「いいえ、警告ですよ」

ぜってー脅迫だ。

「って言うか、何で俺なんですか? 特別な生徒ってワケでもないでしょう?」

「特別じゃないから良いんです。変わっている生徒なんて飽きましたから」

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