《MUMEI》

「マカのあの強い『気』は、カノンさん譲りなんですよ。ただカノンさんは物を媒体にしなければ、その力は使えません。マカみたいに自身で戦う力を持たない方なんですよ」

「ソウマさん。なら、マカは物を媒体にして、力を使うことができるんですか?」

マミヤの問いかけにソウマは両腕を組み、しばらく考えた。

「そうですね…。まあマカ自身が触れているものにならば、可能でしょうが…。マカは逆に、『気』をずっと物にためることはできません。入れてもすぐに、消え去ってしまうみたいですからね」

「へぇ。母娘でも、そういうところに違いがでるんだ」

「そこはまた、マサキさんの力が関係してくるんですよ、ハズミ。私達、血族は決して血縁者からは無関係ではいられませんからね」

ソウマが苦笑して言った言葉に、ルナとヒミカの顔が苦しげに歪んだ。

「あっ、そうだ! セツカのことなんだけどさ」

「はい? セツカがまた何かしました?」

「セツカって、マカの甥なんだろう?」

「ええ」

「じゃあマカの兄貴が姉貴が…」

「うっさいわっ!」

バシンッ!

「あがっ!」

マカのケータイが、ハズミの後頭部に直撃した。

「お前達、声がどんどん大きくなってるんだよ! 近くで人の噂をしているんじゃない! 気が散るだろうがっ!」

そう言って今度はノートを投げてくる。

べしんっ!

「ふがっ!」

今度はハズミの顔面に直撃。

みな、器用に避けたからだ。

「うぐぅ〜」

うなってしゃがみこんだハズミに、ソウマは優しく頭を撫でてやった。

「ずっ随分、殺気立っていますね。マカ」

「予定が思ったより立て込んでて、目が回る! おかげで冬休みはずっと徹夜予定だ!」

落ちたケータイとノートを回収し、すぐにまた仕事を始める。

「今年は特に、事件が多かったからな。長老共からネチネチ言われているし…」

「は〜。…じゃ、アオイとのデートはやっぱり、前倒しね」

「キシもだな…。どうやって説得しよう…」

ルナとヒミカは深く息を吐いた。

しかしその言葉を聞いて、ハズミは顔を上げた。

「えっ? それってもしかして、クリスマスのこと?」

「「それ以外に何があるの?」」

二人の声が、キレイにそろった。

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