《MUMEI》 「今年は少し、騒がしかったものね」 ルナは目に鋭い光を宿し、真っ直ぐにマカを見た。 「しかも用件は、来年まで持ち越しそう?」 「…ああ。マノンの存在が全く掴めていない以上、休みは全く無いだろうな」 「難しい問題ね。カノンは力の使い方が上手い方だしね」 「そう…だな。だが、決着は必ずつけるさ」 マカはケータイを閉じ、深く息を吐いた。 「ただでさえ、外国より珍客が訪れているんだ。ここで血族のみっともないところなんて、見せられるか」 「…かの魔女の一族が、ね。何度か会っているケド…めんどくさい相手が、また厄介な時期に来たものね」 「それでも対処するさ。…我が血族に関わってくるのなら、な」 真剣な表情と声のマカを、店の奥からハズミは見ていた。 「…マカの仕事バカ。でもオレはマカのそんなとこが…」 続く言葉を、飲み込んだ。 彼女の真剣な姿が好きだから。 真摯な思い、強い心、輝きを放つ魂の力に、魅了されてしまったから。 だから、邪魔だけは決してしたくない。 …なりたくもなかった。 だからハズミは、ソウマが企画してくれたクリスマスパーティーにも、笑顔で参加した。 クリスマス前の土曜日の夜、夜通しでパーティーをしてくれることになった。 店の物はソウマが全てどこかへ片付け、今はパーティー会場になっていた。 「それでは! ちょっと早いケド、前倒しクリスマスパーティーってことで。乾杯!」 「乾杯!」 ルナの言葉で、全員がグラスを合わせる。 ルカ達も本当に来てくれて、今年仲間になったハズミとマミヤ、そしてキシとアオイに各々プレゼントをくれた。 料理もソウマとヒミカ、キシが作ってくれて、とても美味しかった。 でもどんなに楽しくても、やっぱりマカがいない寂しさはぬぐえなかった。 パーティーがはじまって二時間後。 少し外の風に当たりたくなって、ハズミは店から出た。 外は曇り空で、今にも雪が降り出しそうだった。 「ホワイトクリスマスかぁ。マカの実家で迎えられるだけでも、幸せだよな」 一度は終わった人生。 でもありえないカタチで再びよみがえった。 その理由は、マカが自分の全てを受け入れてくれたから。 義兄に恋したことも、多くの少女達を死に追いやってしまったことも、ずっと自分を偽り続けていたことも、全てを知ってもマカは、態度を変えなかった。 その強さと真っ直ぐさの、側にいたいと思ってしまった。 今でも後悔はしていない。でも…。 前へ |次へ |
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