《MUMEI》 「…やっぱり寂しいよ、マカ」 言葉は白い息となり、暗闇に消えていく。 まるで自分の姿のようで、気持ちが重くなる。 「…何泣きそうな顔をしているんだ? ハズミ」 「えっ?」 顔を上げると、目の前にはマカがいた。 大きな紙袋を持って、険しい顔をしている、いつものマカが。 「せっかく生まれなおしたというのに、その顔は何だ? パーティー好きなんだろう? なら、喜ぶべきだろう?」 そう言いつつ紙袋をあさり、ハズミの元へ近寄ってくる。 「お前の為のクリスマスパーティーだろう? なら、少しは気を使え」 目の前で立ち止まったマカは、ふわっ…とハズミの首に、オレンジ色のマフラーをかけた。 「えっ? コレって…」 「ソウマの店で扱っている毛糸で、私が編んだものだ。わりと上手くできただろう?」 笑顔でそう言いつつ、マフラーを巻く。 「マカの手編み?」 「ああ、編み物は趣味なんだ。ストレスが溜まった時とか、よく編むぞ」 ハズミは震える手で、マフラーに触れた。 「あったかい…」 「そりゃマフラーだしな。ソウマの店の毛糸だし、特別製だ。大事にしろよ」 「うん…。うん!」 ハズミな何度も頷き、そしてマカに抱きついた。 「マカっ…! マカ!」 「ああ、何だ? 私はここにいるだろう?」 「うん! マカ、ここにいる!」 ぎゅうっと抱きしめると、マカのあたたかな『気』を感じる。 顔を上げると、笑顔のマカが見える。 「…さ、店に入ろう? みんな、心配しているぞ?」 「うん!」 ハズミはマカの手を引き、店に戻った。 マカの突然の出現に、みな、目を丸くした。 けれどすぐに歓迎した。 「ああ、そうだ。マミヤ、キシ、アオイ。ちょっとそこへ並べ」 「ああ」 「はい」 「分かりました」 三人がマカの目の前に並ぶ。 するとマカは、マミヤに黒い手袋、キシに青のボウシ、アオイに生成り色のセーターを渡した。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |