《MUMEI》 . その場に残されたわたしたちは、ぼんやり伊達さんの姿を目で追っていたが、 不意に廉が、わたしの方へ振り返った。 じっと見つめてくる廉に、わたしは眉をひそめると、彼がぽつんと呟いた。 「なんか、俺に言うことないの?」 わたしは、ゆるりと瞬く。 「…『言うこと』って?」 素っ気なく返すと、廉は美しくほほ笑み、キャラメルブラウンの髪の毛をかきあげた。 「俺、カッコ良かっただろ?」 …。 ……。 ………。 またソレか。 相変わらずの廉にわたしは呆れ、半眼で睨んだ。 「なに寝ぼけてんの?そんなこっぱずかしいこと、わたしが言うと思う?」 つれない返事を聞いて、廉はムッとしたようだった。 「…本気で言ってんの?」 苛立ったように言葉を返してくる。 . 前へ |次へ |
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