《MUMEI》
逆鱗
.

じゃあね、と一方的に会話を終わらせようとした、

そのとき。


廉が、いきなり、わたしの腕を掴んで引き寄せた。

それは突然だったし、ものすごい力で、

廉の、その細い身体のどこに、そんな力が隠されていたのか、わからなかった。

わたしはなすすべなくよろめき、廉の傍らに引き戻されてしまう。


「離してよ!」


ビックリしすぎて、声が裏返る。彼の手を振り払おうとしたが、出来なかった。逆に、きつく握りしめられる。

ギリギリと締め付けられる痛みが腕に走り、わたしは声を張り上げた。


「痛いってば!離して!」


本気で叫んだわたしの耳元で、

廉が、静かに…烈しい感情を押し殺すような低い声で、



「…絶対、お前をひざまづかせてやる」



と、囁いた。


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