《MUMEI》

.


………え?



わたしはゆっくり顔をあげ、廉を見た。彼は燃えるような烈しい目つきで、わたしを睨みつけていた。


心臓が、ひとつ、大きく脈打つ…。


今まで見たことないような、廉の怒りを目の当たりにして、わたしはゾッとする。

絡み合う視線を外せぬまま、わたしが絶句していると、

廉は突然、わたしの腕を解放して、一歩、後ずさった。


呆然としているわたしを見て、彼は表情を変えず、続ける。


「覚悟しとけよ」


そう小さく呟くと、廉はサッと身を翻し、わたしをそこに残したまま、スタジオから出て行った。

わたしはそこから動くことも、彼の背中になにか呼びかけることも出来ず、

ただ、立ち尽くしていた。





******

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫