《MUMEI》

お子様用メニューの処にあったミニパフェ
そうした方がいい、と遊馬も納得し
二人は残念そうな顔をしながらソレに決めていた
篠原、遊馬も各々メニューを決め注文
それらが来るまでの待ち時間
雑談に興じる篠原達の傍らで、ショコラとココアが何やら小声での会話だ
「ね、ショコラ」
「なに?」
「ショコラのチョコはどんなチョコなの?甘い?それとも苦い?」
その問い掛けに、ショコラは一粒
周りにばれない様にtチョコレートを出した
ソレをココアへと渡してやる
「ショコラのチョコはお砂糖の入ってないチョコなの。でも、食べると少し甘いんだ」
「そうなんだ」
食べてみてもいいか、とのココアへショコラは頷いて
包みを開き、ココアが一口
そして
「甘いの。これ」
「え?」
思わぬココアからの言葉に
甘くない筈の自分のチョコを甘いと言われ、ショコラも確認に一粒食べてみる
「……甘い。ど、して?」
無糖チョコレートの微かな甘みではなく、それは明らかな砂糖の甘味
自分のチョコレートにある筈のないソレに、ショコラは驚いてしまっていた
「ショコラ、どうした?」
そのショコラの様子に、篠原が顔を覗き込んでくる
篠原にばれてしまうのが何となく怖くなり、ショコラが何とか笑みを取り繕うと
丁度、メニューが運ばれてきた
いつになく慌てて食べ始めるショコラの様に、篠原は気に掛かりはしたが
食事も始まり、問い質す事は止めておいた
「ショコラ」
食べるばかりのショコラへ、やはり少しばかり気に掛ったのか
その頬へと不意に手を触れさせる篠原
触れてきた手に僅かに身体をびくつかせれば
口元に着いていたらしいチョコレートを篠原の指が攫っていった
「チョコレート、ついてた」
「恭弥……」
触れた途端、泣きだしそうな顔
一体、何故そんな顔をするのか
今ここで問い質してやるのが早い、と思いはするモノの
もしその理由が、ショコラにとって喋る事が躊躇われる事だったなら、と考えそれも出来ない
「……そろそろ、帰りましょうか」
食事も各自大体終わり、頃合を見て遊馬がそう切り出して
各々帰路へと着いた
「……どうした?」
帰り道を走りながら、どうも様子のおかしいショコラへ
窺う様に顔を覗きこませる
柔らかく問う事をして来る篠原
だがショコラは何でもないを唯返すばかりで
何度もかぶりを振るショコラ
その手の中に何かが握られている事に篠原は気が付いた
ショコラの手の体温で溶けかかっているソレを取って見ると
ショコラが突然に慌て始める
「だ、駄目!恭弥!」
懸命に止めに入るショコラに、一体どうしたというのかと訝しみながら
篠原は指につき、溶けてしまったそのチョコレートを舐めてみた
舌に感じるのは甘味
ショコラのチョコにある筈のないソレに、篠原はついショコラの方を見やってしまった
「……どしてなのか、ショコラ、解らなくて。さっきココアに言われて気が付いたの。ショコラのチョコ、甘くなちゃったって」
訳が分からない、と顔を伏せてしまうショコラへ
何を言ってやればいいのかが解らず、取り敢えずは頭を撫でててやった
「……恭弥」
「取り敢えずは、帰るか。で、今日はもう寝ろ」
普段通りに言ってやり
漸く落着きを取り戻したショコラは頷いていた
だがその胸の内には不安ばかりが燻って
ショコラは篠原に気付かれない様に
眼尻に溜まっていく涙を拭ったのだった……

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