《MUMEI》

ソウマは店の奥に、笑顔で移動した。

「ムリヤリとは何ですか? ボクとヒミカは結ばれる運命だっただけですよ。キミのように一方通行ではありません」

「ああ、そう言うの、ストーカーに多いよね。自覚が無いって、本当に厄介だ」

キシもハズミも笑みを崩さない。

だが、二人の周囲には暗雲が発生していた。

しかしふと、店の奥にいるソウマを二人の目が映した。

「何傍観しているんですか? ソウマさん」

「えっ? 私ですか?」

「ソウマさんはどっちが正しいと思う?」

「えっえ〜っとですねぇ…」

急に振られ、ソウマは軽く焦った。

「と言うか、ソウマさんは今、恋人いないんですか?」

「私ですか? …まあそうですね。いないと言えば、いませんね」

「えっ!? じゃあ片思いの人はいるってこと?」

急に二人の目に、好奇心の光が宿った。

「えっ? ええっ?」

二人に詰め寄られ、ソウマは壁に背と手を付いた。


「誰ですか? もしかしてマカさん?」

「なっ! ちっ違うよな? ソウマさん!」

「ふっ二人とも落ち着いて! というか、何故いきなり私の話になるんですか?」

「興味があるからです」

「おもしろそうだから!」

ソウマは困り顔でしばらく考えた後、口を開いた。

「…分かりました。二人の熱意には負けました」

「それではっ!」

「誰、ダレっ?」

「誰…とは言えません。そこは詮索していただかないと、ありがたいです」

キシとハズミは互いに視線を合わせた。

「ヒミカ…ではないなら」

「マカじゃないなら、OK!」

「そこは大丈夫です。マカもヒミカも、血縁者としか見えませんから」

二人の表情が明るくなった。

ソウマは深く息を吐いて、言った。

「…片思いはしています。それだけですよ」

「片思い! 長いんですか?」

「それなりに」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫