《MUMEI》

「なので単純に付けっぱなしだと、危険なんですよ。筒は木で出来ていますし、トリップしたままでは火事になっちゃいます」

「げっ現実的ですね」

「はい。でもこのロウソクも特別製ですからね。短いのもしょうがないんですよ」

ソウマは苦笑して、ロウソクを入れていた籠を取った。

「色によって、香りも違います。原材料はこのラベルを見ていただければ分かると思います」

ラベルにはラベンダーや桃の絵が描かれていた。

「じゃあ、この幻灯筒とロウソクはセット売りなんですね?」

「あとこのマッチもです」

アンティーク模様のマッチ箱を、ソウマは見せた。

「ソウマさん…。商売根性あるなぁ」

ハズミのあきれたような感心したような意見に、キシは心の中で賛同した。

「セットで買った方がお買い得なんですよ。それに今のところ、幻灯筒はコレ一つしかありませんしね。中々作れる物でもないですから、貴重なんですよ」

「まっまあヒミカも喜びそうですし、買いますよ」

「ありがとうございます。ではハズミ、幻灯筒とマッチを包んでください。キシくんは好みのロウソクを選んでください。ああ、最初の森林のロウソクはオマケとしておきます」

「あいよ」

「どれにしましょうかね…」

キシがイスに座り、籠を持って、ロウソクを選び始めた。

そこへ…。

「ただいま帰りました」

「ただいま」

「たっだいまぁ。あ〜、調べ物って疲れる」

マミヤ、マカ、ヒミカの三人が店内に入ってきた。

「お帰りなさい! ヒミカ」

「うぎゃっ」

キシが早速、ヒミカに抱きつく。

「ソウマ、レモネードくれ」

「はいはい」

「あっ、コレ包むのか?」

「ああ、手伝ってくれよ。マミヤ」

各々動き出したところで、マカがロウソクに目をやる。

「…何か買うのか? キシ」

「もう購入を決めました。…あっ、そう言えば、マカさん。ソウマさんの片思いの相手って知っていますか?」

店の奥で何かが壊れる音が響いた。

「ソウマの? …まあ検討は付いているが、あえて言わない。プライバシーの問題になるからな」

「え〜! マカは知ってんだ」

「知ってても何の得にもならんことだ。それよりとっとと仕事しろ」

そう言いながら、ソウマがいる店の奥へ行く。

呆然と立ち尽くしているソウマに、マカは微笑みかけた。

「貸し一つ、な?」

振り返ったソウマは、顔面蒼白ながらも、笑みを浮かべていた。

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