《MUMEI》

「あんた達こんな昼間から子供ほっぽり出して……」

ぶつぶつマロージャーは何か言うし。


「いいよ、七生!」

二郎の声を合図に扉を開く。
暗幕で部屋を暗くして薄明かりだけが廊下を照らしている。


「今日は律斗のお母さんの命日でしょう、お祈りしよう。」

篠さんが亡くなる前はこうして母親の死を悼んだらしい。
蝋燭の明かりの下で今年あったことを話したのだという……クリスマスイヴなのに淋しい。

今年は篠さんの死もあるせいかおおっぴらなクリスマスは遠慮していたが、二郎の提案で篠さんがやっていた奥さんの命日をすることにした。

奥さんの好きだった生クリームたっぷりのケーキを毎年食べたらしい。
二郎が去年篠さんに教えて貰ったように、奥さんの好きなアロマキャンドルを焚いてケーキを焼いた。

俺は部屋のセッティングの手伝い。



「ジロー……。」

律斗が二郎に抱き着いた。


「七生もね、助けてくれたんだよ。このキャンドル探してくれたんだ。」

すかさずフォローとは、流石、愛しい二郎。


「バカオ……ありがと。」

バカオはともかくお礼言ってくれただけ進歩か?


「え〜と、帰るかな。」

マロージャーが入りにくそうにしている。


「なんだ、食ってけばいいじゃん。」

席まで引きずって座らせた。

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