《MUMEI》
「なーなーおーくーん
何処行くの?」
「ハライタイ」
片言になっている。
「この間の120円返してくれるんだ?」
七生の鞄をしっかり掴む。借金取りな気分……
「今日は早紀と約束がぁ……!」
そんな目をしても俺には効かないし。
「駄目」
「やだあ!乙矢助けて」
俺が乙矢に弱いの知っててすがり出したよ。
「お前が悪い。部活は毎日行くものだろう?それが承知で入部した筈だ。
夏に備えて忙しくなることはいくらお前でも去年の二郎を見てたら分かるよな?」
諭す乙矢にクラスの女子達が見とれている。
箒を持つ姿さえ絵になる男だ。
「ううう。
じろーのばーか!」
なんだと!
奴め、急に鞄を捨てて飛び出しやがって。
携帯を持ちながら廊下を走り出した。
早紀さんに断りメールを入れるのだろう。
これから学校祭やコンクールで沢山やることがあって部員が団結しなきゃ成り立たない。
去年の先輩から学んでやりたいことも沢山出来た。
確かに彼女も大事だが、この一年間しか俺達は高校二年生じゃないんだ。
それも十分大事なことだと思う。
俺はどちらかなんて秤に掛けられない程に、全力で打ち込みたいんだ。
そして七生にも同じ時間を過ごして欲しいと思う。
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