《MUMEI》 . −−−あれから、 晃が言った通り、わたしと由紀は、口をきいていない。 わたしはまだ、ヘンに偽善者ぶった由紀に対して、怒りを鎮められず、どうしても許せないままでいるし、 由紀は由紀で思うところがあるのか知らないが、あからさまにわたしと関わることを避け、シカトを決め込んでいる。 ………それなら、それでいいと思った。 わたしは視線をゆっくり巡らせる。 休み時間中の教室はざわついていて、 その中に、由紀の姿があった。 彼は自分の席に座り、iPodを聞きながら、目を伏せてじっとしていた。周りのすべてをシャットアウトするように。 −−−確かに、 由紀はわたしの幼なじみで、小学・中学・高校と、ずっと同じ学校だったから、当たり前のように一緒にいたけれど、 それはいわば、『腐れ縁』てヤツで、 お互いに、一緒にいたいと望んでいたわけではなく、気がついたら、そんな状況になっていただけ。 もしも、 あのケンカが原因で、このまま、わたしたちが離れることになっても、 ………その程度の『繋がり』だったってことだ。 . 前へ |次へ |
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