《MUMEI》 . 「なんかね、由紀のヤツ、わたしが昔付き合ってた男を、まだ引きずってると思ってるらしくて。いちいちウザいのよ」 厭味っぽく言ったわたしに、晃は神妙な顔をして黙り込んだ。 なにかを考えるような深い色をしたその瞳を見て、わたしは、どうかした?と首を傾げる。 晃は少し迷ってから、 たどたどしく、言葉を紡ぐ。 「…わからないの?」 突然、そう言われて、わたしは眉をひそめる。 「なにが?」 すぐさま切り返すと、晃は弱り切ったように呟いた。 「由紀が、なんでそんなこと言ったのか」 ………え? ますます意味がわからず、わたしは首をひねった。 そんなわたしに晃は苛立ったように口調を強くする。 「由紀はさ、きっと、仁菜のこと………」 言いかけた、その言葉を、最後まで聞くことが出来なかった。 締め切っていたはずの教室のドアが、急に、開かれたからだ。 . 前へ |次へ |
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