《MUMEI》
小田桐さんの一喝!
.

彼女の剣幕に怯え、わたしはチラッと顔を盗み見て、でも…とぼやく。


「上手くダマすって、そんな簡単に出来るの?そもそも、元気なのに病人のフリなんか…」


どうやってすればいいの?と、尋ねるまえに、

小田桐さんは、キレイな眉を吊り上げて、



「ぅるっさぁぁいッ!!」



大声で遮った。

あまりの大音量に、ついドン引きしてしまう。

黙り込んだわたしに、小田桐さんはズイッと顔を近づけて、体温計など一式を指さしながら、一気にまくし立てる。


「簡単に上手くダマせるように、そのアイテムを用意して渡したんじゃないッ!!だいたいねー、アンタちょっと甘えすぎなのよ!!『なんで??』、『どうして??』、『どうすればいいの??』って聞くまえに、まず最初に自分で考えなさいよ!!」


小田桐さんがものすごい怖い顔をしていたので、わたしは慌てて頷き返すと、おとなしくベッドの上で横になった。

小田桐さんはそれを確認してため息をひとついて、…それじゃあとでね、と呟くとさっさと保健室から出て行ってしまった。


ひとり残されたわたしは、胸の中に渦巻く不安とか不信感とかを、

深いため息に変えて、ゆっくり吐き出した。





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