《MUMEI》
無抵抗
夏希は、ゆっくりと目を覚ました。
「ん?」
ベッドに寝かされている。かなり広い部屋だ。彼女は上体を起こそうと思って気づいた。大の字で両手両足をベルトで固定され、しかも下着姿だ。
「ちょっと!」
仙春美が怪しい笑顔で見下ろしている。
「お目覚めかな。お姫様」
「ほどきなさい!」夏希は怒った。
「そういう生意気な態度取るなら、素っ裸にしちゃうわよ。いいの?」
水色のセクシーなブラとショーツに手を滑らせる。
「わかった、やめて」
無抵抗では強気に出れない。
「お願いです。ほどいてください」
「夏希チャン。目的もなく縛ると思う?」
目的。何だろうか。思いつかない。
「これはいったい、どういうことですか?」
「どういうことだと思う?」仙春美は、嫌らしい手つきで夏希のおなかを触る。「私ねえ。実は、女の子が好きなの」
「え?」
「男には興味ないのよ」
夏希は唇を結ぶと、神妙な顔をして横を向いた。かなりまずい展開だ。
「かわいい。ビビってる」
春美は夏希のおなかを触りまくる。夏希は身じろぎした。
「やめてください、お願いします」
「やめないわよ。たっぷりかわいがってあげる。女は女の弱点を知ってるからね。夏希チャン。わざと敏感なところを攻めてメロメロにしてあげるね」
「やめてください、そういうことは」
夏希は顔を紅潮させ、手足に力を入れた。ベルトだから自力で外すのは無理だ。
「女の子のどこをどう攻めたらアウトか、私は知り尽くしているからね。夏希チャン。ふふふ。とことん乱れさせてあげるね」
「そういうことは、そういう趣味の人とやってください」
「あ、そういう趣味の人を蔑んだわね?」
夏希は慌てた。
「違います、違います」
「そもそも、あなたは目覚めていないだけで、そういう趣味があるかもしれないじゃない」
春美の手が容赦なくショーツに触れる。
「ちょっと、やめてください」
「夏希チャン。確かめる方法があるわよ」
「え?」
「その気がない子なら、同性の私に攻められても平気なはずだから」
夏希は焦った。
「もしも私に攻められて不覚にも昇天しちゃったら、あなたはそっちだから」
「嘘…」
不安な顔色の夏希に、仙春美は悪魔的に迫る。
「体は正直なものよ。いくら心で反発しても、エクスタシーに達してしまったら、肉体で認めてしまうのよ。私は女が好きと」
春美は、内股に手を滑らせる。
「待ってください春美さん」
「夏希チャン。私と真剣勝負をしない?」
「真剣勝負?」夏希は弱気な顔で聞いた。
「私に攻められて、平気でいたらあなたの勝ち。メロメロにされたら、あなたの負け」
「しません、そんな勝負」
「夏希チャン。手足を拘束する利点はね。いくらあなたが勝負を拒否しても、私が始めちゃったら、受けて立つしかないってことよ」
春美は三本の指でショーツの上から圧迫した。
「あっ…」夏希は腰をくねらせた。「ちょっと待ってください春美さん。ちょっと待って!」
慌てふためく夏希を見て、春美は天井を向いた。
「あははは、あははははは」
「え?」
「バカね。冗談よ、冗談」
「え?」
「私は男が好きなの。女の子に興味はないわ」
夏希は全身の力が抜けた。
「もう、からかわないでください」
「ふふふ。ビビった? 犯されちゃうと思った?」
夏希は身をよじると、春美の顔を見た。
「ほどいてください」
「ほどくわけないでしょ。これからが本番なんだから」
春美がそう言うと、ドアが開いた。ゾロゾロと屈強な黒覆面男が部屋に入ってきた。
「きゃあ、いやあ!」
夏希は真っ赤な顔をして暴れた。
「スーパーヒロインが下着姿見られたくらいで騒がないの」
笑う春美を、夏希は赤面した顔で見る。
「恥ずかしい。助けて」
「女よりも男が好きなんでしょう?」
8人にベッドを囲まれた。恥ずかしくて、たまらない。

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