《MUMEI》

アンパンマンが振り抜いた右拳からは、プスプスと煙が立ちのぼっている――…。



ジャムおじさんはカレーパンマンの断末魔の声に硬直していた。



そして―――…



息子のように思っていた男の死を実感すると、ガックリとその場に膝をついた。




A常務「……。」



アンパンマンは一人、ビルの屋上から飛び降りた……いや、正確には自分が突き落とした男の行方を見下ろす…。




目を凝らして見つめる200メートルもの眼下…



カレーパンマンの自殺に見せかけた転落現場には、おびただしいカレーの具が飛び散り…



辺りにはスパイスの芳香が漂っていた…。




夜の新宿を往来する人々は『またか?』といった面持ちで現場を眺め、眠らない街をかっ歩してゆくだけだった。

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