《MUMEI》
軽いキス
「おっはよ〜! 好きだっ!」

「うわっ! んんっ!」

部室のドアを開けてすぐに襲われ、そのままキスされる。

けれどすぐに右手に拳を作り、相手のみぞおちに食らわす。

「ぐほっ!」

「〜朝から何をするっ!」

「あっ挨拶じゃん」

「日本人らしい挨拶をしろっ!」

怒鳴ったのはオレ、演劇部の脚本専門の担当長。

オレが殴ったのは、演劇部の役者専門の主演男優だ。

演劇部で有名なウチの学校は、一言で演劇部と言ってもいろいろな専門がある。

オレのような脚本、コイツのような役者、そして衣装や小物、舞台の大道具・小道具に至るまで細分化され、各々担当長の元で学ぶ。

オレは脚本担当長で、主に脚本に関することで決定権が与えられている。

重要な役目を負っているオレだが、失敗もある。

失敗は…目の前にいる、男。

役者専門で、今現在、ダントツの人気がある。

しかし………何故だかオレを好きだと豪語してならない。

それは周囲まで広がり、恐ろしいことに学校内にまでっ…!

仮にも男女共学校なのに、何故か受け入れが早いところがイヤだ。マジで。

でもコイツに好かれる理由は何となく分かる。

オレがまだ担当長になったばかりの頃、コイツはまだ主役をしたことが無かった。

けれど夏の演劇部の大会で、オレはコイツを主役にと推薦した。

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