《MUMEI》

それまで部員として、同級生として最低限の会話しかしたこと無かったオレ達。

けれどアイツの演劇をするところを見て、コイツは将来化ける!…と、思ってしまった。

だから推薦して、何とかムリを通して、抜擢されて…。

そこからは輝かしく主役人生だ。

演劇部は大会や校内の行事の他にも、時には街に出て公演もする。

すべてコイツが主役で、全てが成功を収めている。

…だからだろうか。

コイツがこんなんでも、周りは平気で受け入れるのは。

「相変わらず冷たいなぁ。この間の舞台、俺良かっただろ?」

「…それは良かったと認める。だからと言って、キスしていい理由になるか!」

ぶ〜ぶ〜言いながら、イスに座った。

「ったく…」

オレはカバンからノートを取り出し、アイツの顔に投げ付けた。

「ぶっ!」

「ほら、見とけ。いくつか書いてきたから」

朝、コイツと部室で二人っきりでいるのは、次の公演の演劇を決める為だ。

いくつか話を書いてきて、それをコイツに見せる。

「8本書いてきたから、最低でも3本選べ」

「わぁお。3本も書くの?」

「役者達が納得するまで書く。それが脚本担当としての役目だ」

同じ演劇部でも、担当によってはバチバチ火花が散る。

それでもトップならば、私情を隠して部に尽くす。

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