《MUMEI》

「う〜ん…」

ノートを真面目に見つめる時、真面目な表情になる。

こういう顔や、役者の時の顔は割と好きだ。

…言ったら調子に乗るが。

「取り合えず…コレとコレとコレ、かな?」

赤ペンでタイトルに丸が付けられた。

「よし、それじゃあ内容を作ってくる」

ノートを奪い取り、さっさと部室から出ようとした。

「ちょっ…マジでそれだけ?」

「他に何がある?」

「まっ待って待ってって!」

いきなり後ろから抱き付かれた。

「なっ…!」

「あ〜癒やされるぅ」


そのまま頬ずりされて、鳥肌が全身に浮かんだ。

「やめろ! 他の部員が来たらどーすんだ!」

「え〜? 今更じゃん?」

「何でだっ!」

確かに演劇をするコイツはキライじゃない!

でもこういう時のコイツはキライだっ!

「あっあのなぁ、考えてもみろよ。演劇担当のお前と脚本担当長のオレが仲良かったら、周りにイヤなふうに思われるだろ?」

「だから今更だって。それもオレがちゃんと演劇をすれば、間違いじゃなかったって思われる」

うっ…。一理ある。

「それに…お前にだって、オレを選んで良かったって思ってもらえる」

「そっそれは…」

もう…思ってる。

けど何か違うっ!

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