《MUMEI》

「もうムリだってぇ。俺、お前がいなきゃもう演劇できないもん」

「なぁっ!」

なっ何てことを言い出すんだ!

しかしコイツはニコニコと笑う。

「だって最初に俺の才能に気付いてくれたのは、お前だし。今の俺がここにいるのもお前のおかげだし。もう離れらんないよ」

「離れろよ! つーか自意識過剰過ぎるぞ!」

「役者なんて、自意識過剰じゃなきゃできないって」

…確かに。

「だから、とっとと俺のものになってよ」

そう言ってまたキスをしてくる。

「んんっ…」

…唇を合わせるようになって、大分経つ。

それでもまだ、恥ずかしさがある。

流石に常識が多少あるのか、人前では抱き着いたりはするけれど、キスはしてこない。

二人っきりでいる時だけ―キスをする。

分かっていながら、何でオレは…!

…わざわざ二人っきりになることをしているんだ?

「…出来ればずっとずっと一緒にいたい。俺が役者でお前が脚本。それでずっとやっていきたい」

「それって…」

夢というより、プロポーズだ。

胸の辺りが熱くなる。

「―好きだよ。演劇とは比べられないケド」

「…そんなの当たり前だ」

オレだって脚本とは比べられないから。

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