《MUMEI》 「でも俺には自信があるよ」 「自信?」 間近で微笑む顔は、確かに自信に満ちている。 ああ…この顔だ。 この顔が見たくて、オレは必死にコイツを主役に推薦したんだ。 「そっ。ずっと俺に夢中でいさせる自信。俺しか見られなくさせる自信。演劇を続けていけば、離れられないだろ?」 「まあ…な」 「だからずっと側にいてよ。俺を輝かせてくれるのはお前しかいないんだから」 こんなのっ…卑怯だ。 演劇をしているコイツを見たければ、ずっと側にいろなんて…。 「まあもっとも、絶対に離さないけどね」 再びぎゅっと抱き締められる。 「絶対に離さない。誰にも渡さない」 耳元で囁かれる熱い言葉。 ああ、本当にコイツは演じるのが上手い。 恋愛に夢中になる役なんて、コイツしか演じれない。 しかも相手がこのオレ。 他に役者はいらない。 「…じゃあ、ずっと頑張れよ。オレも頑張るから」 「もちろん」 柔らかく微笑んだアイツに、オレはキスをした。 誓いのキスを―。 前へ |
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