《MUMEI》

「でも俺には自信があるよ」

「自信?」

間近で微笑む顔は、確かに自信に満ちている。

ああ…この顔だ。

この顔が見たくて、オレは必死にコイツを主役に推薦したんだ。

「そっ。ずっと俺に夢中でいさせる自信。俺しか見られなくさせる自信。演劇を続けていけば、離れられないだろ?」

「まあ…な」

「だからずっと側にいてよ。俺を輝かせてくれるのはお前しかいないんだから」

こんなのっ…卑怯だ。

演劇をしているコイツを見たければ、ずっと側にいろなんて…。


「まあもっとも、絶対に離さないけどね」

再びぎゅっと抱き締められる。

「絶対に離さない。誰にも渡さない」

耳元で囁かれる熱い言葉。

ああ、本当にコイツは演じるのが上手い。

恋愛に夢中になる役なんて、コイツしか演じれない。

しかも相手がこのオレ。

他に役者はいらない。

「…じゃあ、ずっと頑張れよ。オレも頑張るから」

「もちろん」

柔らかく微笑んだアイツに、オレはキスをした。

誓いのキスを―。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫