《MUMEI》

ちょっとおかしい。

まるで人成らざるモノの棲み家だ。

妙な気配が工場を覆いかぶるように存在していて、気配の中からモヤがあふれ出している。

コレでは人死には減らないな。

一定の期間を置いて、気配の主が人を喰らう。

喰らわれた人間もまた、人成らざるモノへと変わる。

そうしてこの土地に棲み続けているのか、気配の主は。

「まっ、私には関係ないことだな」

歪んだ土地神がいる場所など、数え切れないほどある。

ここに工場が建ってしまったのも、不幸な出来事だとしか言いようがない。

私には関係のないこと。

だから歩き出した。


山に入ると、後は獣道しかない。

まるで時が止まったかのように、森の中は静かだ。

しかし私は迷うことなく歩く。

しかし…寒い。

バックから買ったココアの缶を取り出し、飲んだ。

あたたかさと甘さにほっと一息。

これから向かう所は、とても寒いからな。

30分ほど歩いて、私は山の中の古びた社にたどり着いた。

「リン! いるのか?」

社に向かって声をかけると、袴姿の女の子・リンが中からひょっこり姿を現した。

「マカ先輩! お久し振りです」

リンと共に、この山の神々であるコムラとミトリが出てきた。

「約束の物は用意できたか?」

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