《MUMEI》

「…とと、あんまりゆっくりは出来ないんだった」

慌てて鏡を包み、バックに入れる。

「リン、コムラ、ミトリ。悪いが今日はここまでな。礼はまた後日、ゆっくりたっぷりするから」

「分かったわ」

「気を付けて帰りなよ」

「また遊びに来てね!」

笑顔の三人と別れ、私は山を下りた。

今日は予定がつまっている。

ゆっくりは出来ないのが、少しさみしいな。

しかし電車の時間が迫っていた。

少し急ぎ足で山を下りる。

山の冷たくも清浄な空気が体に満ち、少し浄化されたようだ。

…ここんとこ、疲れていたからな。


電車にはギリギリ間に合った。

慌てて乗り込むと、少し騒いでいる学生達と同じ車両になった。

見た目からして、私と同じ歳ぐらいだろう。

「だからぁ、これから行くところには出るんだって!」

「おもしろそうですね、榊部長」

「…どこがよ? 依琉。私は目の前が暗くなるわ…」

「大丈夫ぅ? かんちゃん」

「オレも神無月先輩に同感です」

…しかし変わった連中だ。

『気』を視れば分かる。

同属ではないが、強い『気』を持つ者が四人もいる。

あのメガネをかけた青年以外、能力者だな。

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