《MUMEI》

五人はどうやらこれから行く所について、盛り上がっているらしい。

メガネをかけた青年が興奮した様子で説明をし、それをニコニコと聞いている洋風の美少年と、異国の血が混じっているであろう美少女。

そしてウンザリとしているのが、和風の美少女と、美少女…に見える美少年だな、…の以上五人。

珍しい組み合わせだが、結構な美形そろいで。

あのメガネの青年も、黙っていれば文学美青年なのに…。

…聞くとも無しに話題を聞くと、どうやらオカルトっぽいのが、非常に残念だ。

やがて3つほど駅が通り過ぎ、彼等は腰を上げた。

この駅の「出る」というウワサの民宿に泊まるらしい。

何でも落ち武者の霊が出る町らしいが…私は絶対にカンベンだな。


そう思っていると、ふと洋風の美少年と目が合った。

…妙な雰囲気を持つ美少年だな。

そんなことを考えていると、あの美少年が、

―くすっ―

と微かに笑った。

…何だ? まるで心を視られたような…。

いぶかしく思っている間に、彼等は次々と電車から降りていく。

美少年は1番最後に降りるみたいだ。

だが、降りる瞬間、口元が動いた。

声には出なかったものの、語っていた言葉は…。

―また、お会いしましょう―

と、確かに唇は動いていた。

電車の扉はすぐに閉まったが、彼は電車の外から私を見送った。

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