《MUMEI》 …どうも彼は、一般人ではないらしい。 しかし同属でもない。 なのに…自分と近い匂いがした。 「まっ、縁があれば、な」 縁があれば、また会えるだろう。 彼等、と―。 シートにゆっくり座りなおした。 まだ時間が早いせいか、人は少ない。 彼等が去ると、余計に静けさが感じられる。 だが懐に入れていたケータイが震えたことで、意識が現実に戻る。 開けて見ると、親友のミナからだった。 中学時代の2人の友達の墓参りを、友人達と行って来たという報告メールだった。 その墓参りで、フーカという同じ学校の女の子と知り合ったと、あったが…。 …何とも言えず、苦笑してしまった。 だが返答メールには、明るく喜んでやらなければなるまい。 送ってやった後、私はため息を吐いた。 …今年はかなり忙しかった。 どういうワケだか、同属が目立ってしょうがなかった。 それは多分…。 「ヤツ、のせいか…」 口の中の呟きは、誰に向けるでもない。 けれど確実に私の心を痛める。 目を閉じると、ありありと思い浮かべられる。 自分と同じ姿・形をした少年―マノン。 私の双子の弟。 私に最上級の愛憎を抱いている。 そして私も…マノンを心から憎み、愛している。 前へ |次へ |
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