《MUMEI》
洋上取引
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―――…翌朝。



サハリン沖の日本海上は、この時期にしては珍しく波が穏やかだったが、身を切るような氷点下の冷気と、濃い朝靄がたちこめていた…。



やがて東の空から低い太陽が顔を覗かせると、朝靄のなかで光の乱反射が起こり、辺りを幻想的な雰囲気へと変貌させる。



その美しい光は、波間に漂う一隻の貨物船の姿を照らしだした…。



ロシア船籍の貨物船の操舵室には、くわえ煙草で舵輪を握る男と、双眼鏡を手にした男が佇んでいる。



二人とも軍隊の経験もある、ガッチリとした体格の強者だった。

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