《MUMEI》

二人が見つめる視線の先には、朝靄の中、赤と緑の識別灯が、ぼんやりと光を放っていた。



双眼鏡を手にした男は、舌舐めずりしてニヤけている。



ピロシキエフ(以下、ピロシキ)「あの光がそうだな…?」



ボルシチェンコ(以下、ボルシチ)「ああ…。


日本円の香りと、生臭い臓器の臭いがプンプン匂ってくるようだぜ…。」



ボルシチェンコと呼ばれる男の頭は、茶色い深皿に牛肉と野菜を具沢山に煮込んだ深紅色のスープが盛られている。



もう一人のピロシキエフの頭は、挽肉と野菜、春雨が詰まった、こんがり狐色した揚げパンの形をしていた。



この男達こそ、ロシアン・マフィア…



“ボルシチェンコ・ピロシキエフ”を取り仕切るウクライナ出身の義兄弟…。



――…組織の双頭だった。

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