《MUMEI》 二人が見つめる視線の先には、朝靄の中、赤と緑の識別灯が、ぼんやりと光を放っていた。 双眼鏡を手にした男は、舌舐めずりしてニヤけている。 ピロシキエフ(以下、ピロシキ)「あの光がそうだな…?」 ボルシチェンコ(以下、ボルシチ)「ああ…。 日本円の香りと、生臭い臓器の臭いがプンプン匂ってくるようだぜ…。」 ボルシチェンコと呼ばれる男の頭は、茶色い深皿に牛肉と野菜を具沢山に煮込んだ深紅色のスープが盛られている。 もう一人のピロシキエフの頭は、挽肉と野菜、春雨が詰まった、こんがり狐色した揚げパンの形をしていた。 この男達こそ、ロシアン・マフィア… “ボルシチェンコ・ピロシキエフ”を取り仕切るウクライナ出身の義兄弟…。 ――…組織の双頭だった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |