《MUMEI》
目隠しされた男
暫くして修二が戻ってきた。

隣には見知らぬ男が一人。
リョウに負けぬ位青白く、異常に痩せ細った男。


何故が布で目隠しをされている。


修二はその男の手を引きながら檻の方へ歩いてきた。
「お待たせ致しました、ドクター。」

「うむ。では美雪君、少しの間電源を切ってくれたまえ。」


電源とは多分、鉄柵に流れている電圧の事だろう。


その証拠に、有馬が檻に触れても何も起こらなかった。

ギィィ…という、鉄同士が擦れ合う音と共に檻の扉が開く。

中ではまだリョウが苦しそうにしている。



助かる…



加奈子がそう安堵したのもつかの間。
有馬はその目隠しされた男だけを檻の中に入れ、バタン!と扉を閉めてしまった。


「どういう事!?さっき助けてくれるっていったじゃない!!」


怒りのあまり思わず有馬の胸倉を掴む。

「まぁ、そう焦るな。」

有馬は加奈子の手を払おうともせず、じっと檻の中を観察するように見ている。

「見てなさい、リョウ君の発作が次期、治まりますから。」

「どういうこと…?」


「いいから見てなさい。」

全く訳が分からない。

こんな得体の知れない男一人入れた所で、一体何が変わるというのだ。


しかし有馬に尋ねてみても“見てろ”の一点張りで何も教えてはくれない。


かといって加奈子がどうこう出来る問題でもないのだ。
だから仕方なく有馬の指示に従う。



加奈子もじっと檻を見つめた。




これから起こる事が一体何なのかも知らず…




有馬達と同じ様に見つめていた。

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