《MUMEI》 . わたしは深いため息をつき、廉から目を逸らすと、両手で頭を抱え込んだ。 「…他の子、あたってよ」 わたしのうんざりした声を聞いて、廉はやたら嬉しそうだった。 わたしの耳元に顔を近づけ、弾むような軽やかな声で、やだね、と囁く。 「…アンタから借りないと、意味がない」 ………は?? 意味がわからず、わたしはゆっくり顔をあげた。廉と再び視線が絡む。 彼はキレイな唇を三日月型に歪ませて、言っただろ?、と続けた。 「『覚悟しとけよ』って…」 わたしは目を見張った。爽やかなはずの廉の笑顔が、今は鬼の形相に見える…。目が笑っていない。 廉はわたしから顔を離してニッコリする。大きな手の平をわたしへ差し出し、 「すぐ返すから、貸して」 と、よく響く声でのたまった。その声に、女子たちは黙り込み、わたしと廉に注目する。 . 前へ |次へ |
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