《MUMEI》

.

わたしは深いため息をつき、廉から目を逸らすと、両手で頭を抱え込んだ。


「…他の子、あたってよ」


わたしのうんざりした声を聞いて、廉はやたら嬉しそうだった。
わたしの耳元に顔を近づけ、弾むような軽やかな声で、やだね、と囁く。


「…アンタから借りないと、意味がない」



………は??



意味がわからず、わたしはゆっくり顔をあげた。廉と再び視線が絡む。

彼はキレイな唇を三日月型に歪ませて、言っただろ?、と続けた。


「『覚悟しとけよ』って…」


わたしは目を見張った。爽やかなはずの廉の笑顔が、今は鬼の形相に見える…。目が笑っていない。

廉はわたしから顔を離してニッコリする。大きな手の平をわたしへ差し出し、


「すぐ返すから、貸して」


と、よく響く声でのたまった。その声に、女子たちは黙り込み、わたしと廉に注目する。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫