《MUMEI》

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廉の目の前までやって来ると、彼は急に表情を緩ませた。

そして、


「仁菜のノートは、やめたほうがいいぜ」


こいつバカだから、と、いきなり暴言を吐く。

失礼なことを言われて、わたしはビックリしたが、由紀は気にせず、続ける。


「アンタにノート貸したいってヒト、いっぱいいるんだしさ。テキトーに借りなよ」


由紀の抑揚は柔らかいのに、どこか固い雰囲気があった。

廉は、突然割り込んできた由紀を不審に思ったのか、眉をひそめていたが、

すぐにいつも通りの爽やかな笑顔を返す。


「悪いけど、宇佐美サンに借りるって、もう決めてるんで。口、挟まないでくれないかな?」


一向に引かない態度を見せ付けた廉に、由紀は笑顔を消し、

トーンを抑えて、呟いた。


「…自分の立場、よく考えてからモノ言えよ。こんなことしておいて、あとで仁菜がどうなるか、わかってんの?」


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