《MUMEI》

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聞き取りにくい声で言ってから、由紀は笑顔で晃に振り返り、ノート貸してやれよ、と命じる。

いきなり話を振られた晃は、戸惑いながらも頷き、急いで自分の机からノートを数冊取り出して持ってきた。

由紀は晃からノートを奪うと、廉の胸に押し付ける。


「これで良いだろ?」


唸るように言ってから、由紀はみんなを振り返って、笑った。


「ハイ、この話終わり〜!6限始まるぞ〜」


席着こうぜ〜!と呑気に言いながら、由紀はさっさとわたしたちから離れていく。女子たちは、は〜?と眉間にシワを寄せた。


「羽柴、なんなの?」


「仕切るな、うぜえ!!」


女子からの集中砲火を浴びながら、由紀はヘラヘラ笑っていた。


由紀の横顔を見ながらわたしは胸を撫で下ろす。とりあえず、危機を免れたようだ。



………由紀、

助けてくれたんだ。



暴言はさておき、由紀の機転に感謝はしたが、ケンカ中ということもあって、わたしは複雑な気持ちになった。

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